源氏物語と日本人―紫マンダラ

著者の河合隼雄氏は兵庫県篠山市出身の河合兄弟の一人である。紫綬褒章や文化功労者を受章しており、2007年になくなったときには篠山市立図書館で河合隼雄氏の著書がまとめて展示された。

日本モンキーセンター所長をつとめた河合雅雄氏は著者の兄である。篠山市内には外科、歯科、整形外科など河合一族が今も医院を開いている。その中の外科を開いているのは筆者の高校時代には同級生だった人である。

さて、著者は最初は高校の数学教諭として3年間働いた由であるが、その後ユング心理学を学び、ロールシャッハ法や箱庭療法などを研究した。つまり、この本は臨床心理学者が紫式部の心理を分析した本である!

『源氏物語』を読んでいるうちに筆者が感じたのは、源氏のまわりに現れてくる女性たちが、すべて作者、紫式部の分身である、ということであった。彼女は自分の人生経験をふり返り、自己の内面を見つめているうちに、自分の内界に住む実に多様で、変化に富む女性の群像を見いだした。ある女性は誠実で忍耐強い妻であったが、他の女性はコケティッシュで、男性に甘言を投げかけるのを年老いてもやめることはなかった。ある女性は嫉妬の炎を燃やし、その炎は死後も消えることはなかった。「これが、これらすべてが私なのだ」と彼女は思った。
この多様で豊かな「世界」を描くにあたって、彼女は一人の男性を必要とした。・・・それが光源氏である。



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Author:片山誠一
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