新型インフルエンザはこれまでの季節性インフルエンザと大きく異ならないということが常識となっている。しかし、著者はその考え方は必ずしも正しくはないという。
季節性インフルエンザが直接肺を冒すことはまれであるが、新型ではウィルス性肺炎を起こすことがある。これは治療がきわめて難しい。また、若い人が死亡することも多い。従来、インフルエンザでの死者というのは、死亡率が予想よりも多い部分を計算して統計的に出したものであって、年間1万人といっても身近な人がインフルエンザで死亡するという経験はあまりなかった。しかし、いま経験しつつある死者数はインフルエンザを直接の死因とするものであり、若い人が亡くなるということが社会に与える影響は大きいという。
日本の行動計画では、スペイン風邪と同じ2%の致死率を前提にして64万人が死亡するとしている。H5N1型で致死率が10%を超えることはあるかもしれないが、そのような場合に被害を最小限に抑えて社会機能を守るということは命題として成立しないという。
致死率10%ということは、3000万人が感染していた場合300万人が死亡するわけですが、それだけ多数の死亡者が出ていながら、同時に社会機能を守ることは不可能です。むしろ積極的に社会機能を崩壊させて感染拡大を抑えるしかありません。
死亡者の数を減らすためには、社会機能が崩壊するのはある程度しかたがないということです。「外出するな」。「会社に出てくるな」。「電力会社でもガス会社でも交通機関に従事していても出社するな」、と言うほかなくなります。このようにして社会機能を落とすと、それによる二次的被害もたくさん起こります。しかし、感染拡大を防ぐことを第一の目的とすると、それはしかたのないことなのです。
著者たちは、スペイン風邪よりも病原性が軽いケースについてもっと考えておくべきだったと言うが、それは今だから言えることである。むしろ、冬になって流行が激しくなればそんなことではすまないのではないかと恐れる。